私は、持病の悪化時と、手術時に何度か入院した経験があります。
その頃の体験で、不思議なものがいくつかあるのですが、
最近、妙に思い出す出来事をお話しようと思います。
初めて手術を受けて、経過を見ながら入院していた時のことです。
簡単な手術だったため、1週間で退院したのですが、
この時は、とても長い入院期間に感じました。
手術を受けてから2日が経ち、
幸い、痛みもほとんどなく、日中は快適に過ごしていました。
そして消灯時間になり、
やはり術後で体力が落ちているのか、ベッドに横になるとすぐに眠りに入りました。
真夜中、ふと何かの気配がして、ぼんやりと目を覚ましました。
体が重い。頭の中がぐるぐると回るような眩暈と息苦しさがあります。
全身麻酔のせいだろうか…… そんなことを働かない頭で考えました。
それでも疲れのためか、意識が遠のき、また眠り始めそうになった時のことです。
「温めてあげようか?」
そんな低い男の声と息が耳にかかり、鳥肌が立つとともに一気に目が覚めました。
左肩を下にして横になっている私の背中に、誰かがいる……
後ろから抱き付いてくる腕を解こうと思うのですが、体が動きません。
痴漢?と思う怖さと、
どうも、この世のモノではないような気がする怖さでいっぱいになりました。
どうにか動かなければ、と手に力を込めます。
(ナースコールを押そうか? いや、もし人ではなかった場合、変な人だと思われる)
そうとっさに思った私は、
とりあえず寝返りを打つ要領で、肘鉄を入れてみて、様子を見ようと思いました。
人間にしても、霊にしても、何かしら効果があるだろうと。
そして、まだ動かずにいた体に、動け!動け!と、意識を集中させ、
思い切り肘を振り落としました。
ボスッという音ともに、私は仰向けの体勢に寝返りました。
振り落した肘には手応えはなく、布団にシワを作っただけに終わりました。
はぁはぁと、息を上げながら、あたりを見渡しますが人の姿はありません。
(やっぱり生きた人じゃなかった)
なんとも気持ち悪い体験に、
電動ベッドを起こし、消灯時間にもかかわらずテレビの電源を入れました。
無音の状態では、とても一人では居られなかったのです。
こういう怖さは個室のデメリットですね。
数分間、テレビから流れるバラエティの笑い声を聞いて、
また、横になりました。
しかし、ウトウトと深い眠りに入ろうとすると、
またどこからか息遣いが近付いてきます。
聞かないふりをして、なんとか一晩を過ごしました。
そして、3日目の夜も、また同じ現象に悩まされました。
早く退院したい…… そんな思いでいっぱいになりながら、
迎えた4日目の夜は、私に生気が戻ったせいか、何も起こりませんでした。
やはり体力が落ちていると、良いことはありませんね。
最近、テレビで「性的な霊」がいるという話を聞く機会が増えました。
そのせいか、この出来事を思い出します。
また別の入院時では、
病室備え付けミニキッチンの、電気のスイッチのひもが無くなっていることがありました。
切れたんだろう、と思っていましたが、
初日から、どうも気になりました。
キッチンの電気が点けられないことは不便でしたが、
病室のメインライトの光が十分に届く範囲でした。
だから、そんなに気に留める必要はなかったのですが、
どうも気になりました。
しかし、その時は長期入院でしたので、数週間が経った頃には、
ほぼ自宅のように自由に過ごしており、電気のひものことも気にならなくなっていました。
そんなある夕暮れ時、
パチンッ そんな音がキッチンから響き、
パチパチと電気が点灯し始めました。
「え?」
ちょっと、いえ、かなり驚きましたが、
とりあえず電気を消そうとキッチンのほうに歩いていきました。
特に不思議な点はなく、ただ煌々と電気が点いていました。
消そうと思うのですが、スイッチのひもが無いため、
どうしようかと悩み、結局、看護師さんに事の次第を話しました。
勝手に点灯したことを聞いた看護師さんは、
「えぇ~!? 怖い~!」と叫んでいましたが、
ゴム手袋で、スイッチのつまみを引っ張って、電気を消してくれました。
その後、誰かの視線を何度が感じましたが、
勝手に電気が点灯するようなことは一度きりで、無事に退院しました。
やっぱり病院って、色々ありますよね。
今でも看護師のお客様がいらっしゃると、
「ありますよね~」と不思議なお話を共有することがあります。